秋山やヒカゲノカヅラ露しとど
2010-02-10


新訂普羅句集。昭和6年11月。
 前田普羅は15歳頃、『日本風景論』を読んで登山に目覚めた。その後植物研究会にも入会して山野を巡る。大正元年に初めてホトトギスに投句する。大正9年頃まで断続的に投句して虚子から指導を受けた。大正13年に報知新聞社富山支局長として富山に転居。昭和4年に退職し、俳句結社「辛夷」の初代主宰として経営に当たる。
 この句は専門俳人として2年後、生活も落ち着き、富山市周辺の里山での嘱目であろうか。ヒカゲノカヅラというような地味な植物に注目して俳句に織り込むのは深い知識があったことが伺える。一茶にも「ハンノキのそれでも花のつもりかな」という俳句がある。目立たないものに優しい視線を注いだ一茶らしい俳句である。植物観察は孤独を癒すというが俳句に詠めば尚癒されることだろう。
[一句鑑賞]

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