国境の島・対馬の山旅E御岳と平岳、千俵蒔山
2020-01-02


一等三角点の山歩きの締めは平岳(本点)。位置的には九州で最北になる。外国に一番近い一等三角点ともいえる。世界遺産に登録されて上陸できなくなった沖ノ島243m(本点)と有明山(本点)とはきれいな三角網を構成する。1等三角網図を見ると平岳は有明山と沖ノ島と結び、壱岐の岳ノ辻(本点)とも結ぶ。有明山は岳ノ辻と結び、岳ノ辻は沖ノ島と結んでいる。すると観音岳(補点)の役割が薄い。
 それは「一等三角測量を行うに際し,最初は本点(約45`間隔)測量を実施して大体の間隔を定め、ついで一等の補点(本点を含めて約25`間隔)の測量をして一等三角点網を完成させ、次に一等三角点を含めて約8`間隔に二等三角点を設定し、以下二等三角点を含めて約4`間隔に三等三角点を設け、更に以上を含めて約2キロ間隔に四等三角点を設けて、各基点から地形を20bの等高線に描写して地形図を製作した」を読むと分かる。つまり観音岳は有明山と平岳の中間を補う役目だった。

 R382を北上する。今日で5日目でこの道も慣れた。曲折が多く、トンネルも多い。これでも豊玉町までは改良されてきたのだろう。以北はところどころ道が細くなる。カーブもタイトになる。登山口のある上県町までは工事中の箇所もあるので今まさに改良の真っ最中である。山間部を走ることが多くなるのでツシマヤマネコの事故現場も表示してドライバーに注意喚起を促す。人間様より丁寧な扱いになっている。猫は飼い猫でも車の前を直進する癖があり、引き殺される。中々の自信家なので引き返すことはしないから犠牲になる。畜生の性である。
 さて、予め見当をつけていた御岳公園Pに着いた。どう坂から平岳に直登する登山口は見た目には分からないままここまで来た。車は1台もない。用足しを済ませてさらに奥へ走ると数台の先行車があった。意外に人気がある山と知る。
 鳥居のある登山口をくぐって谷沿いから急な中腹の登山道を登るとすぐに尾根道になる。先行者に追いついてしまった。聞くと地元の家族登山だった。主人と奥さんがふうふう言いながら登っている。やがて子供らのグループに追いつく。すぐに神社がある。ここではささやかながら谷水が出ていた。この先で御岳と平岳の分岐になり左折。常緑樹の深い森を急登すると山頂だった。三角点はないが蔵王権現の祠があり、他にも複数あった。海の見える山は蔵王権現と関係があるのか。愛知県田原市の蔵王山、衣笠山にも蔵王権現が祀ってあった。
 後続が続々登頂してきて賑やかになったので私は辞して、平岳に向かった。分岐から直進する。ゆるやかな稜線はすべて常緑樹の森におおわれている。ほとんど踏まれたことがないような登山道を落ち葉を踏みしめながら上り下りする。1等三角点もうっかり見過ごしてしまいそうなところだった。
 展望は無。測量時には高い櫓を建てて三角測量をしたであろう。
 国土地理院のHPには「明治15年には、この三角点の選点 100点が終了し、明治17年からは陸軍参謀本部測量局がこの測量を引き継ぎ、いよいよ全国的な三角測量が始まりました。参謀本部では、8年間のドイツ留学から帰朝した(明治15年)田坂虎之助が現在の測量作業規程に当たる「三角測量説約」を完成させ、本格的な一等三角測量に着手しました。この時点から測量は、フランス式からドイツ式に変更されました。
 一等三角測量はこうして実施に移され、大正2年にはひととおりの観測が終了し、一応の完成を見ました。その後、千島や、樺太、台湾といったいわゆる外地の測量が実施され」た。
 こうして対馬の一等三角点は全部踏破できた。往路を戻った。登山口に戻るとまだ2台はあった。結構人気のある山だ。
 さて下山後は、司馬さんの『街道をゆく13 壱岐・対馬の道』に出てくる千俵蒔山と地元の人に聞いた和多都美神社(わたづみじんじゃ)も訪ねたい。

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