『拒否できない日本』(アメリカの日本改造が進んでいる)を読む
2009-04-26


著者は関岡英之。文春新書376で平成16年4月20日に発刊されるやおよそ半年で14刷というから相当な反響があったかに思う。経歴は慶応大学卒業後、当時は外為専門の東京銀行に入行し、証券投資部に配属される。職場でアメリカのグローバリズムの洗礼を受ける。バンカーの仕事は14年間で一旦退職し、早稲田大学大学院で建築を学ぶ。37歳で北京で行われた国際建築家連盟世界大会に参加して再びアメリカのグローバリズムの浸透に触発される。ここで建築家の資格制度を国際的に統一しようという、決定がなされた。1999年6月のことだった。この事件をきっかけにしてアメリカの対日戦略を調査し始める。それも秘密文書の発掘ではなくHPなど公開されている情報源ばかりという。
 著者は後書で「今の日本はどこか異常である。自分たちの国をどうするか、自分の頭で自律的に考えようとする病がどこかで深く潜行している。」と危惧し「アメリカ政府の日本政府にたいする『年次改革要望書』なるものの存在を知ったとき、それが病巣の一つと」気づく。次々に疑問を解明した。それが本書の狙いであった。
 あまりに面白くて?ぐいぐい引っ張られて深夜に及んでしまった。これまでの不可解な事件がさてはあれもか?と思わせる示唆に富んでいる。ロッキード事件では田中角栄だけがアメリカ発の情報漏洩でやられた。他の政治家もあると思うが田中角栄さんだけはアメリカから自立する考えだったために嫌われていたという別人の説もある。
 アメリカから見れば当時のソ連よりも日本の方が脅威と感じている。中国と組むのも不思議であるがアメリカから中国に相当な情報が流されている。中国の反日政策、アメリカのバッシングもおなじ基盤であろう。日本と中国が仲良くなるとアメリカには不利益なのだ。ロシア、韓国も同じである。アメリカの国益に適うように日本の隣国と紛争の種を作る。 
 金融、貿易だけでない。日本の司法改革にまで口出しをされる。検索である掲示板のこんな投稿がヒットした。
「郵政民営化のときは、批判や反対があったのに、共産党、社民党を含め国会は全会一致、司法権力も協力、日弁連翼賛、メディアも一切批判しない裁判員制度や法曹人口の拡大。 実はこれは、郵政民営化と同じように、アメリカの年次改革要望書によるものであった。 以下略。
 まったく厄介な同盟国である。戦争は勝たなくては行けない。戦争に負けたばっかりにアメリカの言いなりにならざるを得ない。しかし、戦争には負けたが繊維、電機、自動車など工業製品の貿易では勝った。アメリカの生命線だった金融は自壊し、ITバブルも弾けた。驕る平家は久しからず、という諺そのままである。今は相手も必死なんだ、と思う。日本の弱体化よりもアメリカの方が先に弱体化するかも知れない。そうなると日本が望まない円の基軸通貨化もありうる。混沌とした世界情勢が続く。
 それにしても丹念に調べたものである。
[トピックス]
[本]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット